卒業生紹介コーナー
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04 ICIFからニセコへ

佐藤 雄太(2009年マスター研修参加)

私がICIFを知るきっかけとなったのは、最初にお世話になったお店のシェフがICIF卒業生だったことでした。
その後イタリア人と働く機会に恵まれ、そこにもICIFで学んだ人がおられたこともあり、ICIFに行くことにしました。
料理留学を決意したことをもう少し具体的に云えば、日々自分が作っている料理をその国に行き空気を吸い大地を踏んだこともない料理人がイタリアの料理を作ってそれは果たしてイタリア料理なのか?という、自分の気持ちや経験の中にこれら基本となる混ざりっ気のないものを入れたいということが自分を動かした純粋な動機であったように思います。

ICIFに行くまでの自分は料理業界の知り合いがほとんどで職人の世界に揉まれていました。

ICIFに通っている間は色んな経験のある方達と共同生活をする中で、職人とは違う考え方、それは広い視野に立って物事を見ることの大事さを学びました。毎日一緒に過ごしていた仲間は本当に家族のような存在でした。

ICIFの現場研修一店舗目はロンバルディア州の一つ星レストラン、次に行ったのがICIFの講師を勤めておられたフランコ先生のお店La Betulla。ここに来て料理を学ぶというよりもイタリア料理の基本的な考え方を教えていただき、数々の経験に触れることができました。

地中海のサルデーニャ島で開かれたマグロの料理コンクール、トリノで行われた日本スケート連盟主催の立食パーティーの料理監修等、当時の僕にとっては毎日がチャレンジの連続でとにかく刺激を受ける日が重なりました。

帰国後、イタリアでの経験を生かしながら料理を続け、料理長、コンサルタント等を経験したのちオーナーシェフとしてお店を出し、イタリアで学んだ地域を大事に思う考え方から地域の生産者さんと密に連絡を取り合いながら、あのひとが作った食材を中心に献立を組み立てるお店にしていました。
時には直接畑に行き、収穫した分の写真を撮って後日精算するという形で対応してもらった農家の方もおられました。コロナ禍のタイミングに遭遇してしまったこともあり、このお店は閉めざるを得ず、現在は北海道ニセコにあるスモールラグジュアリーホテルのエグゼクティブシェフとして働いています。

北海道の環境はイタリア時代に過ごした風景に大変似ており白樺の林、街と街をつなぐ長い道、心新たにイタリア料理に向かい合いつつ、変わりゆく時代にフィットした働き方を次の世代に繋げるよう日々奮闘中です。

03 プーリアの太陽 
~南イタリアで叶えた夢

プーリアの太陽 ~南イタリアで叶えた夢

濱田 幸子(1997年マスター研修参加)

食の旅で訪れたイタリアで、実際に味わった食べ物の香りと味、食感の違いに驚き、その場で、「イタリアで料理を学びたい!」という思いが芽生えたのが全ての始まりでした。

この強い思いから、様々な出来事が回り始めました。ある番組で、ICIFの研修生が現地の店で奮闘する姿と出会い、未来の自身と重ねていきます。そして後日、その方が書いたイタリアからの食情報が掲載された新聞記事と再会しました。その片隅に小さく書かれたICIFの連絡先。それはネット時代以前の情報が少ない中、やっと探し物を見つけた時の喜びのようでした。

現地で学ぶ施設の充実さ、受け入れて下さるイタリアの方々に期待と確実な手ごたえを感じ応募しました。思いから数年越し、イタリアでコックになる夢を抱いての第一歩です。

日本全国からそれぞれの思いでイタリアに来た一群は、料理人、ソムリエ、その卵達、イタリアで学んで店を出したいetc…。経歴も異なりますが、共通するのは「イタリアが大好き!」、言葉も不安があるけれど、皆情熱を持って飛び込んで来たのです。

クラスメイトとの交流も現地研修ならではのご縁です。授業の後、近くのBARで時には夜が更ける迄、地元の美味しいワインを片手にイタリア料理について語り合いました。今でも良き仲間です。

イタリアでは好奇心と五感を全開、青い空、水の味、風や空気、太陽の眩しさや暑さ等を肌で感じて、四季を通じて食材の移り変わりを追っていきます。全ての体験は、イタリア料理を深く理解する上で大切な糧になりました。そして何よりも、イタリアの人達とのコミュニケーションは、現地研修を更に有意義なものにしていきました。

私は南イタリア・プーリア州のかかとの部分にあたるサレント地方の小さな町のレストランが現場実習先となりました。古代ギリシャの影響も受けたという歴史ある土地です。プーリア州はイタリアの台所とも言われる食材豊かな大地が広がっています。この自然豊かな場所にどんどん惹き込まれていきました。厨房での日々は目新しい事ばかりで、学ぶ事が多く一日中無我夢中です。このレストランで、自然の恵みを活かしたシンプルで滋味深い料理を身につけました。

一方で、日本の常識が通じない、交通や通信の不便さ、時間の感覚、習慣、考え方も違う世界とぶつかる事もありました。ですが過ぎてしまうとそれが笑い話となり、良き思い出にもなっています。この地の生活によって、道端に何気なく咲く花やハーブの香り、360度見渡す世界から目に入る豊かな色彩等によって感性は磨かれ、イタリア料理の概念も変わりました。そこで暮らす人々と接する事から学ぶ事も多く、人間的な成長もあったように思います。もうひとつの故郷ができ、いつでも帰れる場所となりました。

イタリア滞在中は、歴史、文化、地理的要因の影響を受けながら、郷土でずっと食べ継がれてきた食材、料理に幾度となく感動しました。この唯一無二の経験は、いつでも鮮明に蘇り舌に記憶され、イタリア料理を作る上で原点となっています。

数年前に、実習先での一連の体験記を「プーリアの太陽 ~南イタリアで叶えた夢」(文芸社)に綴りました。これは当時の日記をまとめたものです。現地でお世話になった方々、魅惑の地プーリアへの恩返しの意味も込めています。
 
イタリア料理の底なしの魅力を、これからもいろいろな形で提供していきたいと思っています。卒業生として、イタリアでの料理研修を考えている方の参考になれば幸いです。

プーリアの太陽 ~南イタリアで叶えた夢

02 北陸金沢の地で

小関豪,小関雅子

料理に対する足腰を強くしてくれたピエモンテ州内陸部のランゲと金沢近江町市場

小関 豪(2012年マスター研修参加)

イタリアへの料理留学方法はいろいろあった中で、ICIFはピエモンテ州政府公認のイタリア食文化と調理技術を伝える専門の学校で、それに特化したカリキュラムが組み込まれていたこと、そして自分が尊敬する先輩達も多く門戸を叩いていたことなどが選んだ理由でした。

現場実習先は、ICIF本校から30kmほど離れているピエモンテ州ランゲ。このランゲ全域は近年ブドウ畑の景観がユネスコ世界遺産に認定されるほどワイン銘醸地であり食文化も素晴らしく、特に秋の白トリュフは有名です。これらを求めて世界中からお客様が訪れるので、実習先のお店も忙しく、さらに席数が多いので当然下ごしらえをする分量もあり、日本にいた時より働いたという印象が残っています。

忙しさに追われる毎日の中で一緒に働く仲間とコミュニケーションを図るには、イタリア語を話す機会を持つことが基本であり、大事になります。幸いにも私は日本で少し勉強してから留学しましたが、時には言われっぱなしで言い返せないもどかしい場面にも出会い悔しい思いも経験しました。しかし喋れないからといって黙っていても誰も助けてはくれないので、自分から拙いながらもどんどん話しかけていくとイタリア人はちゃんと理解しようと聞いてくれました。

休みの日にはワイナリー見学(専門用語が多くほとんど解りませんせんでした。笑)など内容の濃い日々を過ごし、すっかりピエモンテ好きになって帰国しました。

日本に戻り、石川県金沢市で妻の実家が経営するイタリアンレストランを継いで日々奮闘してます。東京では目にしたこともない鮮度抜群の魚介類、個性豊かな地物野菜類など料理人として惹き付けられる食材が北陸の地には沢山あります。

ピエモンテ州の小さな地域のひとつであるランゲで経験したように、北陸の金沢でしか育たず入手できない食材を生かし、満足していただけるイタリア料理を作り続けていきたいです。

忘れられない歩みと私にとってのイタリア人

小関 雅子(2011年マスター研修参加)

私が初めてイタリアに渡ったのは19歳のとき。もちろん、地縁血縁も何もなくすべてが初めてで、毎食その土地で出されている料理を食べることでいろんなことを吸収しました。イタリア人の自分が生まれ育った地域の食材に対する愛着、郷土の料理や郷土の畑から採れた葡萄だけて造ったワインを心から楽しむ姿がこんなにも素敵なんだと心に残りました。

数年後日本に帰り、実家のレストランで働いている間にイタリアという国にますます興味が湧き、もう一度行きたいなと思っている間に迎えた師走も大晦日、NHKBS放送で放映されたICIFも紹介されている番組を視て両親も背中を押してくれ、それが二度目のイタリアに渡るきっかけになりました。

ピエモンテは個性豊かな食材が素晴らしく、その土地で生まれた郷土料理をとても大切にしていて、その料理を食べるために距離を厭わずその地に足を運ぶ!と言っても過言ではないくらい魅力が詰まっていることが忘れられません。住んでいる人も限られタクシーもないようなところのレストランに予約の電話を入れ、道に迷ったと連絡するとわざわざレストランの人が迎えに来てくれるようなイタリア人にも出会いました。少し時間にはルーズだけれど、日本人がどこかに置いてきてしまった人とのコミュニケーション力が私は一番好きです。自分の思っていることや考えを直接言葉にして言い表さないと理解してもらえないこと、これからイタリアに渡り料理修行を計画されておられる皆さんには、日常生活は会話で成り立っているという基本を知ってほしく、そしてイタリア人のあたたかさにぜひ触れてほしいです。

私は、両親がイタリアレストランを営んでいたこともあり、幼い頃からなんとなくイタリアを身近に感じていました。中学生の時に父が体をこわし、店を守らなければいけないという思いが生まれ料理人を志すようになりました。高校卒業後、専門学校という道もありましたが、とりあえず行ってみよう!っとすぐに渡伊。さすがに言葉もわからず2~3日は宿に閉じこもり状態。

今では考えられませんが、その当時はインターネットや、SNS、LINEなどなく国際通話出来るテレフォンカードを買い、公衆電話を探しては日本に電話。話せる時間は長くて15分。今なら無料でテレビ電話が楽しめるのが、家族にもなかなか連絡できずさみしい日々を経験しました。しかし街を散歩、スーパーでの買い物からスタート、イタリア語をとにかく耳から入れてイタリア語に慣れるようにしていきました。

ちょうどその時はイタリア国内通貨リラからEU単一通貨ユーロが導入されたときだったので、スーパーのおばちゃんもユーロに慣れておらずお互いに分からないことを笑いに変え、気さくに笑いかけてくれたイタリアの人には助けられました。日本では黙ってお店に入り一言も言葉を発することがなくても買い物ができます。無言でできるということは他人との接触に気を遣う必要もなく便利なようではあるが少し寂しい気がしています。パンを買うときは前に並んでいる人のまねをしてパンを買い、毎朝バールに行きカフェを注文し、次の日にはカフェとパンを注文し、ひとつ、ひとつ新たなミッションを自分に課しイタリアに慣れる努力をしていきました。

私はイタリア人も好きだし、街も大好き。
楽しい毎日でしたが、いろんな事が重なりアレルギーになり、水、金属、トマトなどいろんな物が合わなくなり帰国しようということに決めました。思えばさみしい決断でしたが日本とイタリアの違いなど学んだことが山のようにあり、思い返しても私の人生において貴重な時間であったと実感しています。

金沢のイタリアン「EVANS(エバンス)
〒920-0902 石川県金沢市尾張町2-6-1

EVANS(エバンス

01 東京から和歌山への移住という分かれ道を選択させたイタリアでの経験

金丸知弘

金丸 知弘(2012年マスター研修参加)

私がICIFへ行きたかった一番の要因は、イタリアの政策や経済などに強い興味があったからです。ICIFという学校のあり方や成り立ちにも大変興味がありました。
イタリアは日本と国土の形が似ており、四季もあり、海もあり、山間部での農業も行われています。

一見して経済は日本と比べるとうまくいっていないように感じられますが、国連世界観光機関(UNWTO)によれば、海外からのインバウンドは世界第5位です(2019年)。
日本よりも国土が小さく、人口も半分くらいしかいないのにです。ちなみに日本は12位です。

輸出超過で、イタリアで生産された農産品や食料加工品は、国内で消費される量より国外へ輸出される方が多いのです。イタリアの食品やお酒は今や日本のどこのスーパーに行っても買うことができます。一方、日本の品物は同じように海外で並んでいたりすることはごく限られています。

これらの裏側にはどんな取り組みや政策があるのか強い興味がありました。
イタリアは観光を軸とする経済に強く、そして回転していて、それらを下支えする取り組みが大変魅力的です。ICIFもイタリアという国の観光経済や食料加工品、ワイン等の輸出を側面から手助けする取り組みの一つとも言えます。

もう一つ私がイタリアへ行って学びたかったことは田舎の扱い方です。
イタリアは観光地でもない、電車やバスなどの交通インフラも整っておらず商店も少ない、そういった何もない“ただの田舎”を上手に使って活かし、その環境を理解しうまく利用して集客につながるビジネスをすることに長けています。そのための商材の一つが料理です。

地産地消で地域の食材を使い、“ただの田舎”に足を運びたくなるような要因と魅力をもたらし、その土地に行かなければ食べられない郷土色満載の料理やサービスで集客に努めていると実感させられました。

私がICIFから紹介してもらい現場実習を行いましたリストランテ「Guido da Costigliole」も、もうびっくりするくらい周りに何もないところでしたが、大勢の根強いファンがおられ毎晩遠路からのお客様が来られる魅力的なお店でした。

私もそういった学びを経て、2016年に東京目黒から和歌山県の龍神村に移住しました。
兼ねてより田舎に移住し、田舎で商売がしたいと考えていた私は、和歌山の環境がとても気に入ったのです。

そのことについてこの度、誠文堂新光社から本を出版しました。
子育て世代のための 快適移住マニュアル:知っておきたい、田舎でできる仕事・お金・子育て・地域のおつきあい』です。
是非ともご一読ください。

子育て世代のための 快適移住マニュアル:知っておきたい、田舎でできる仕事・お金・子育て・地域のおつきあい

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